人文系私設図書館 Lucha Libro

桜の絵 つぼみの絵

「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」とはなにか

 人文系私設図書館ルチャ・リブロは、図書館、カフェ、パブリック・スペース、研究センターなどを内包する、大げさにいえば「人文知の拠点」である。蔵書は歴史や文学、思想、サブカルチャーといった人文系の本を中心としており、「役に立つ・立たない」といった議論では揺れ動かない、そういう一点を常に意識している。話をガシガシ先に進めるというより、「そもそもさぁ…」とはじまりに立ち戻るような、その始点自体が拠って立つところをも疑問視するような、そんなところ。

 しかし世の中そんな回りくどい奴を求めちゃいない。小さなことは置いておいて、明日の予定を消化する方が先決だ。こちとら社会の役に立つ人材を求めている。「えっと、あなたの言う社会って…」などと口にするのはもっての他。社会と言ったら社会だ、前に進み続けるのだ。

 例えば、現代社会は「科学」によってすごいスピードで便利になり、寿命も延び、近代以前に比べると生活は格段に楽になっている。さらにインターネットの登場以降、情報が世界を駆け巡る速度は増しに増し、0か1かを適用すればどんどん話が進んでいく。また現代の「科学」は人の命を救ってくれる一方で、多くの人の命を奪っていくことも、さまざまな関わり方でもって、しているはずである。もはや「科学」によって生み出されたものを「どう扱うのか」といった、いわゆる「倫理」の話が追いつけないほど、世の中の流れは急である。

 この急流からいったん岸辺に上がり、「この流れはどこへ向かっているのか」「自分はこの流れに耐えられる人間なのか」と少し考える時間が必要ではないか、そんなふうに私は思っている。人には向き不向きがある。それは時として、自分の体が「身」をもって教えてくれるけれど、たいていすぐには分からない。時間がかかるのだ。

 人文系私設図書館ルチャ・リブロは、河畔に御座を広げてしばし休んでいくような、でも決してその川から目を逸らすわけでもなく、かといって闇雲に水中へ飛び込むことを勧めるわけでもない、その非常に「中途半端」な状況を形にしたような、そんなところを目指している。